東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)81号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、次の点において判断を誤つたものである旨主張するが、右主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、
(一) 原告は、まず、本件審決が本願考案と第一引用例とは、上筒と基筒との各外周面が面一になるようにさせた構成において一致するとしたことをもつて、事実を誤認したものである旨主張するが……第一引用例の実用新案公報を総合すると、第一引用例における内筒2と頭部6とは螺糸4、5をもつて螺合されており、したがつて、この螺合において内筒2と頭部6とを密接することにより、両者は、その外周面において、面一になるようにすることができるものであることを認めうべく、他にこれを左右するに足る証拠はないから、その限りにおいて、上筒6及び基筒1の各外周面を面一になるように密着させた本願考案の構成と異なるところはないとするを相当とする。
原告は、この点に関し、本件審決は、前記面一になるような構成が重合孔に対する止鋲の嵌着の構造と相まつて奏する特段の作用効果を看過誤認した旨主張するが、その特段の作用効果なるものは、基筒1と上筒6とが面一になるように密着した構造のもたらすものであることは、原告の主張自体に徴して明らかなところ、第一引用例においても、これと同様の構造をとるものであること前認定のとおりである以上、本願考案と第一引用例との間にこの点に関する差異があるものとは認められないから、本件審決が、両者は右面一になるような構造において一致するとしたことをもつて、この作用効果を看過誤認したことによるものと断ずることはできない。なお、右作用効果のうち、外観上、基筒と上筒6とが面一で、止鋲14の頭部10'が等間隔に点在し意匠的にも優美であるとされる部分は、それ自体は、第一引用例のものにおいて内筒と頭部とを面一と螺合した場合と格別の差異はなく、したがつて、本願考案の本質的な効果とみうべきものでないばかりでなく、この効果は止鋲を等間隔に点在せしめた構造のもたらす通常の効果にすぎないから、これをもつて、本願考案の奏する特段の作用効果とすることは妥当ではない。
(二) 原告は、さらに、本件審決は、本願考案における連成筒を二重の径小とした垂直体による面接触の構成がもたらす作用効果を看過誤認したものである旨主張するが、<書証>及び本件弁論の全趣旨によれば、本願考案のような種類の消火器の内筒において、内筒の垂直上端辺部の上周縁を平面環状とし、これに蓋を載置するようにすることは、被告も主張するように、この種の技術分野において、きわめてありふれた構成であること、並びに第一引用例は、右の構成によるときは平面環状部と蓋とが面接触するため、非常の際、両者が密着して蓋が落ちにくいという欠点を除くため、径を縮少するとともに、立上り縁8にとくに尖鋭な環状端面を設けたものであること及び第一引用例の内上方へ向う立上り縁が本願考案の内筒の上端辺部を垂直体とした構造と対比して作用効果に格別の差異は認められないことを認めうべく(この認定を左右するに足る証拠はない)、これらの事実が本願考案の出願前すでに周知であつた以上、第一引用例の内筒2に内上方へ向う立上り縁8を形成して尖鋭な環状端面を設けるに代えて本願考案のような構成とすることは、当業者のきわめて容易になしうるところというべく、また、その奏する作用効果も、それぞれの構成がもたらす通常の作用効果の域を出るものとは認めがたく、その間特に実用新案における考案というに値するものが存在するとは認めることはできない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつてこれを棄却する。(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)